モヤモヤ血管!病院で原因不明とされる身体の痛みの正体

長引く痛みの原因は血管が9割

病院で異常がないとされつつも痛みに苦しむ患者さんを救えるという確信

奥野先生の著書である「長引く痛みの原因は、血管が9割」や奥野先生の執筆論文を読み、今まで私が臨床で感じてきていた疑問が解け、私の仮説が立証されました。点から線になるのを感じました。さらに奥野先生の著書から、従来の医学では異常がないとされつつも痛みに苦しむ患者さんを救いたいという奥野先生の強い意志が感じられ、恐縮ながら大変共感しました。

奥野先生の研究は、まだ途中で、ゴールにはたどり着いていないそうです。とはいいましても、現時点での研究成果は、必ず多くの患者さんの救いとなるという確信があります。

是非とも一人でも多くの方に知っていただきたいと強く思いまして、現在わかっていることを、勝手ながら私自身の経験、考察をまじえながら記させていただきます。患者さんだけでなく、鍼灸師・あんま指圧マッサージ師・柔道整復師・トレーナーなどメディカル及びコメディカルに関わるに関わる同業の皆さんにも是非知っておいていただきたい内容です。

画期的な「運動器カテーテル治療」

カテーテル治療

まず、カテーテルという言葉は、病院を舞台にしたドラマなどでご存知の方も多いと思います。難しい手術をカテーテルを使って成功させるという場面は、きっと記憶にあることでしょう。

カテーテルは、太さは様々ですが、とっても細い管です。血管の中に通すカテーテルには直径1mm以下のものもあります。

「運動器カテーテル」という言葉は、一般的には馴染みの薄いと思いますので少し解説させていただきますね。運動器とは、関節や骨、筋肉、腱、靭帯など身体を動かすための臓器の総称を指し、それらの異常は一般的には整形外科の専門分野とされています。

カテーテル治療は、元々は狭心症や心筋梗塞など、心臓の血管(冠動脈)がコレステロールなどによって詰まったり、狭くなることで起きる疾患に対する治療法としてはじまりました。病院では循環器内科が担当です。そのような疾患には従来では、投薬による薬物治療か、症状が重い場合は開胸して大がかりな外科手術となる冠動脈バイパス術が一般的でした。

これに対し、手首や足の付け根からカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入し、目的とする部分まで到達させて処置を行う方法がカテーテル治療(PTCA治療)です。カテーテル治療のメリットとしては、全身麻酔ではなく局所麻酔で行うため、また、体に大きくメスを入れることもないため患者さんの身体的負担が少ないということが第一にあげられます。

つまり、カテーテルを血管の中を経由して、目的とする運動器へアプローチをする方法が運動器カテーテル治療です。運動器疾患に対しては、これまではこのようなアプローチはされてきませんでした。運動器カテーテル治療は画期的な治療方法なのです。

奥野先生のカテーテル治療はもちろん素晴らしいのですが、何よりも、今までの検査、理論では原因不明とされていた「痛みの原因」をつきとめて「可視化」させたという点が革命的だと筆者個人的には感じています。

腫瘍など病気がある部分には異常な血管が増殖してしまっているという事は以前から知られていました。何故そのように病的な血管が増殖してしまうのか?奥野先生は、この問題の原因を遺伝子レベルで発見し、2012年に論文発表されました。奥野先生は、異常な血管に対する研究のスペシャリストなのです。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22797809

先生は、元々はカテーテルにて癌の治療として腫瘍に栄養を送っている血管を機能させなくする処置を行っていましたが、たまたま乳がん患者さんが肩痛を訴えて肩関節周囲の血管の調べた所、異常な血管が見つかったので、同様の処置を行ったところすぐに痛みが軽減したということがきっかけで、慢性痛と病的血管の関係性を発見するに至りました。

痛みがあるところにはモヤモヤ血管(新生血管)がある

奥野先生の研究によると、3ヶ月以上続く頑固で慢性的な痛みの部分は血流が悪いわけではなく、反対に異常な毛細血管が発達してしまうために生ずるとのことです。

この異常な毛細血管を、奥野先生は著書の中でモヤモヤ血管と称しておりますので、当エントリーでも以下そのように呼ばせていただきます。

モヤモヤ血管がどのような血管かは、以下の写真のピンクの丸の部分にあるうっすらとした血管の集合体です。

カテーテル治療でモヤモヤ血管が消失

このモヤモヤ血管が発達してしまいますと、その部分に不必要に血流が多くなってしまっています。これが、慢性的な痛みの原因とのことです。

血流が多くなるから痛みが出る。温めた方がいいんじゃないの?と不思議に思われるかもしれません。しかし、突き指や捻挫、火傷をした際に冷やしますよね。温めれば血行がよくなり冷やせば血行が悪くなる、医学的には、急性期は冷やして慢性期は温めるというのが正解とされています。

奥野先生の研究により、急性期は冷やして慢性期は温めるという定説が、実はケースバイケースであることがわかったのです。

慢性痛の原因は、血流が悪いからではなかった!!血行不良=痛みの原因説は迷信。

痛い部分は血流が悪いためという従来からの通説ですが、この説の根拠について調べてみました。すると痛みのある部分の血流を正確に計測した研究というものは・・・存在しないようです。研究もされていないのに定説・常識のように信じられているのは何故でしょう?

有名なのはペイン・スパズム・サイクル(Pain-spasm cycle)という考え方で、痛みを感じる→交感神経が優位になる→血管が収縮→血流減少→疲労物質・発痛物質の蓄積→さらなる痛み・・・という理論です。

ペインスパズムサイクルの説明図

たしかに理にかなっていますし、現実的にこのような機序で痛みが生じることも勿論あることでしょう。ただ注意しなければならないのは、この理論に交感神経が絡んでいるという点です。理論上、交換神経が絡んでいるが故にストレスが慢性痛や肩こりの原因という安易な決め付けが起こりやすいのです。それゆえにレントゲン・MRIにて異常がなければ心理的要因からではないかと、とりあえずリハビリ通いを促されるか、心療内科を勧められる例も実際にあります。たしかに痛いしつらいのに、それをストレスのせいにして片づけられてしまうのは痛みを理解されないという点で患者さんの立場となって考えると、とてもつらいです。

ストレスのせいで片付けられてしまうケースで特に多いのは、肩こりや腰痛です。今まで、実態がない=骨に問題は無いとされてきたために、西洋医学的に異常無しであり治療方法が無い、そのため一時的な緩和や快楽のためにマッサージ屋さんに足を運ぶことになり、通い続けることでさらに慢性化の路をたどるのが一般的な「普通」の流れです。

一般の方に限らず医療従事者も含めて誰もが血流は多ければ多い方が良い、という根本的な部分の見解をこれまで疑う余地もなかったわけですね。

血流改善で逆に痛みが増す!!

痛い部分は血流が増加していた・・・これは通説と真逆になることとなります。肩こりなど、レントゲンなど画像所見に現れない慢性的な痛みや不快感がある箇所は、血流が悪くなって疲労物質がたまっているから、というのは誰もが疑わないもはや常識となっていました。「血流が悪いから血行を良くしましょう」というのは病院だけでなく、鍼灸・マッサージや整骨からはじまり様々なシチュエーションで合言葉、または印籠のごとく使われています。

実際は、血流改善しても症状が改善しない例が少なくないという事実、血流を改善することが本当に良いことなのか?という疑問を私はずっと感じていました。

例えば肩こりで考えると、ひどく慢性化してしまっている方は「いつも決まってここのポイントが凝る」というケースが多いのです。なぜこのようなケースが多いのかと言いますと、患部を温めて血流改善を図っても、温めているその時とその後しばらくは緩和するものの時間が経てば、または温めた部分の皮膚温度が戻ると結局は元の症状が出てきてしまうためです。そして、一時的でも緩和できればまだいいのですが、楽になるはずが逆に疼いて悪化してしまうこともあります。今、この記事をお読みの方で、このような状態に心当たりのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

血流が多くなると痛くなる理由

実は、血管と神経はセットで存在するのです。これは解剖学上人体の基本的構造です。血管が新しく出来るということは一緒に神経も新しく生まれます。ですのでモヤモヤ血管にも神経が隣節しています。この神経は慢性痛を伝えるタイプの神経(C線維)でありモヤモヤ血管に血流が増加すると血管が膨張しそれに伴い神経が刺激されて痛みを感じるというメカニズムとなります。

実は肩こり治療を確立する上でぶつかった壁でした。

血流が悪いことが原因であれば、それを改善すれば治るはずが、治らない・・・仮に戻ったとしても、そんなにすぐに戻ってしまうのは血流が悪いことは根本的な原因ではないという仮説を立て、首や肩(腰も含めて)の筋肉に負担をかける原因は何かということをひたすら掘り下げていって現在の治療方法を確立するに至ったという経緯があります。